春が近づくと、「平成中村座」に行った事を思い出す。
もう4年も前になるけれど2012年の4月に当時話題になった「平成中村座」での歌舞伎を観に行った!
演目は「故 中村勘三郎」さんが演じる「法界坊」で、NY公演で評判が良かったもの。
以前からこの演目に非常に興味があり、更に何と言っても銀座にある歌舞伎座ではなく隅田公園に「平成中村座」と銘打って建てられた小屋での舞台となれば行かないわけにはいかない!
当日はとにかく穏やかな天気で、桜が舞う本当に最高な日だった。
公演時間ギリギリに駅に着いたのでタクシーに乗り、運転手さんに「今日は平成中村座に歌舞伎を観に行く」と伝えたところ、色々と浅草界隈の事を教えてくれて、「ここは下駄屋が多いでしょう。あの「助六」も下駄履いてるでしょ? ここら辺にあった下駄屋の下駄屋職人がモデルなんですよ。」と、歌舞伎や落語などの演目で「勧進帳」と並ぶ人気の「助六由縁江戸桜」の主人公の助六にモデルがいる事を教えてくれた。
「助六由縁江戸桜」はいつか観たい演目。
友人と待ち合わせて中に入ると、今か今かと開幕を楽しみにしている観客達の高揚感が伝ってきた。
思い思いに記念写真を撮る人達。 私達ももちろんパシャリ!
さて、「法界坊」のあらすじを簡単に。
金と女が大好きな法界坊(勘三郎)は、どこか憎めない愛嬌あふれる乞食坊主。永楽屋娘お組(扇雀)に恋い焦がれる法界坊は、盗まれた吉田家お家の重宝”鯉魚の一軸(りぎょのいちじく)”をお組と恋仲である手代の要助(実は、吉田宿位之助松若(よしだとのいのすけまつわか)・勘太郎)が探し求めていると知ります。いい金蔓(かねづる)を見つけた欲深い法界坊に、永楽屋番頭の正八(亀蔵)や山崎屋勘十郎(笹野高史)らも加わり、鯉魚の一軸を巡る悪巧みが繰り広げられます。一度は道具屋甚三郎(実は吉田家の忠臣・橋之助)にやり込められ散々な目に遭った法界坊でしたが、お組の父永楽屋権左衛門(彌十郎)と松若の許婚の野分姫(七之助)らも巻き込み、さらに数々の悪行を行うのでした。
最後に今作の大きな見どころのひとつ大切所作事「双面水照月(ふたおもてみずにてるつき)」では、法界坊と野分姫の霊が合体したお組そっくりな葱(しのぶ)売りの女(勘三郎)が、徐々に本性を現しながら変化に富んだ舞踊劇を魅せます。
この「法界坊」は故中村勘三郎さんの当たり役と言われた演目。
確かに「愛嬌たっぷりの法界坊」という役は、お客さんとの距離感を出来るだけ縮めて、歌舞伎をもっと身近に感じて楽しんでもらいたい!と日々活動されてた故中村勘三郎さんのキャラクターにぴったりだった。
NY公演の様子を当時TVで少しだけ観たけれど、ニューヨーカーとアドリブで掛け合って多いにお客を楽しませてた。
この平成中村座での法界坊も、同じくアドリブでお客さんとの掛け合いがあり、「これぞ江戸庶民の文化!」という感じで賢こまらずクスクスと笑い声が聞こえた。
私が楽しみにしてたのは、もちろんクライマックス!
NYではそのクライマックスシーンに「NY市警の本物のポリス達」が登場して話題になった。
ここは日本、浅草。。。NYのポリス達が登場するわけないけれど、とにかくワクワクしながら観ていたら、なんと舞台の後ろが開き、外に咲き誇る桜の景色をバックに徐々に正体を現しながら法界坊と野分姫の霊が合体したお組そっくりな葱(しのぶ)売りの女(勘三郎氏)が踊るシーンが繰り広げられ、「うわ〜!」という感嘆した声と拍手の渦だった。
なんと形容したらいいのだろう?
「粋な演出だ!お見事!」の一言に尽きると思う。 観客の興奮は最高潮に達し、私達もずっと拍手していた。
想像してみて欲しい。パーっと明るい日差しが小屋に入り込み、本物の桜が背景にあり、舞台では紙吹雪が舞っていて、その中をクライマックスシーンが繰り広げられている。。こんな贅沢な舞台は無い!
スタンディングオベーションはいつまでも鳴り止まなかった。。。
その後、後を継いだ中村勘九郎さん、中村七之助さんによる「平成中村座」公演が2015年4月にあり、私は行けなかったけけれど、演目は違っても銀座の歌舞伎座とは違う江戸情緒ある小屋での公演は最高だったと思う。
外の桜がバックになったシーンがあったかわからないけれど。。。
ところで、歌舞伎を含む芝居小屋は現在では姿形を変えて存在しているが、ポツンポツンと場所がバラバラにある。
「芝居小屋が並んでいて〜」と表現されるように、「その界隈」で芝居小屋が並んでいた当時はどれだけ賑やかだったろう? と思う時がある。
今、東京はどこも似たり寄ったりの街、景観だけど、「劇場」がズラ〜っと大・小、マイナー・メジャー関係なく建ち並び、観劇した後に客が立ち寄るお土産や、役者に関係するグッズを売っている店や、観劇後の感想を楽しくお喋りするカフェ、芝居などのライターや、脚本家、俳優の卵たちが集まる「エリア」というのがあると最高だと思う。
下北沢、高円寺。。。などアーティスト達に人気の街もあるけれど、もっと「特色」があった方がいいと思う。 そこで切磋琢磨する。。。という空間。
歌舞伎も「座」がいくつかあった時代のようになれば、もっと活気が出るのでは?と思う。時代が違うかな。。。
次回は絶対に「助六由縁江戸桜」を観に行く!
江戸三座についてはコチラ。