海老蔵の「助六」を歌舞伎座の幕見席で観てきました。

幕見席でも充分に楽しめる歌舞伎

先日、やっと念願がかなって、歌舞伎座に市川海老蔵演じる「助六」を観劇してきた。

前から「助六」を観たい!と思っていて、歌舞伎座のサイトをチェックしていたけれど、私がチェックした時には違う演目だったり、既に観たことのある演目だったりと、なかなか「助六」が公演される事がなく、段々と歌舞伎座のサイトをチェックする事をしなくなっていった。

だから今回、「そういえば今、何を公演しているんだろう?」とふらっと歌舞伎座のサイトをチェックして「助六」という演目を目にした時は本当に興奮した。

すぐにチケットを購入しようとしたところ、既に手頃な値段の席は売り切れ、私は幕見席で観ることにした。

幕見席は全公演に対して必ず用意されるとは限らないので、事前にチェックして幕見席が用意されている事を確認し、当日は外で案内するスタッフにも「こんなに早く並ばなくても大丈夫ですよ〜。入れますよ。」と言われるくらい気合が入ってなんと1番目だった。。。

幕見席に関してはこちら。

幕見席は、一人、一枚しかチケットを購入できず、一人だけ並んで他の人の分まで購入するという事が出来ないので注意が必要。

だいたい、目的の演目のチケット発売時間より1時間前くらいには並ぶといいかも。もちろん、30分前というのでも購入できそうだけど、「助六」のように人気演目、また人気俳優が出るとなると1時間くらい早めがいいと思う。

幕見席は会場の1番上で、後ろになるけれど、普段コンサートなどで武道館だ、東京ドームだともっと大きな会場に慣れていると、一番後ろの幕見席でも全く問題ないくらい、舞台との距離感がそう遠くない。

人物が米粒。。。という事では無いので充分楽しめる。

私はだいたい幕見席か、B席で安く購入して、観劇する回数を多くした方がお得だと感じる。

最も、いつかは花道の近くで観てみたいけど。

助六は、意外と物語性が無い??

いや、もちろん「0」では無い。当然、ストーリーはある。

「歌舞伎十八番」の1つで、通称『助六』とよばれています。
曽我五郎時致(そがのごろうときむね)は、花川戸の助六(はなかわどのすけろく)という侠客となって、源氏の宝刀友切丸(ともきりまる)を探し出すため吉原に出入りしています。三浦屋の傾城揚巻(あげまき)と恋仲になった助六は、吉原で豪遊する意休(いきゅう)という老人が、この刀を持っていることを聞きだし、奪い返すというストーリーです。

日本芸術文化振興会『歌舞伎への誘い』)より

けれど。。。

2時間にも及ぶ演目だが場面は廓の三浦屋という店の前だけで、全く場面転換無し。

いや、それはそれでいいのだけれど、思ったほど「濃密なストーリー」とは感じず、とにかく傾城達の美しい衣装と、助六の出で立ちが見ものといった感じがした。

「股くぐり」という笑を誘う場面や、口上から始まるこの演目は、この口上で洒落た事を言う事も一つの特徴らしく、確かに興味深かったけれど、もっと「深み」が感じられるかと思っていたため、「あっさり」していて拍子抜けしてしまった。

昔は他にも場面はあったようだけど、どんどん排除され今の形に落ち着いたみたいだ。 特に初期の頃は今より荒事の部分があったようだ。

うーん、今、またそこを復活させてもいいのでは?と思う。

「助六」は海老蔵にピッタリの役だと思う。

「助六」が登場し、花道で形を決めた時、「あ〜これが助六なのね。。。」と感激した。

衣装は黒羽二重に五つ紋所の小袖を着流しに着て、印籠を下げ、黄色い足袋に桐の下駄、そして手には雨でもないのに傘。そして、トレードマークの江戸紫の鉢巻。

イヤホンガイドを借りていたので説明を聞くと、紫の鉢巻は右で巻いていて「喧嘩鉢巻」で、左に巻くのが「病鉢巻」と言うのだそう。

それにしても、立ち姿と、あのメイク、役柄、どれを取っても「海老蔵にピッタリの役」と納得できるものだった。

何せ、ある秘めた理由があるとは言え喧嘩に明け暮れる毎日、そして遊女からは人気者という役で「男前」じゃないと務まらない。

単に格好が良いという問題では無く海老蔵の持つ「目力」でしょうね。。。

市川家は「荒事」という芸を得意とする家柄。
そのため、見得を切る時にやはり目力がある方が見栄えが圧倒的にいいわけで。

パンフレットより(明治元年 茶番狂言で絵師の国周が自ら助六を演じた様子を描いた作品)

ところで、この「黒羽二重に五つの紋所」という御門服は、徳川将軍を始め大名や旗本などの殿様の「普段着」だったそう。 粋よね。

また、パンフレットやイヤホンガイドによると、衣装の「黒羽二重」は、あの大奥の奥女中であった「江島」から団十郎に贈られたものらしい。

あの「江島生島」の「江島」だ。

花道で助六が「ある方向」に向かって頭を下げるところがあったのだけど、それは江島が観劇する際に座っていた方向に向かってしているのだとか。

とても興味深い!

「助六由縁江戸桜」という外題で演じるのは成田屋だけ

ところで、「助六」と一口に言っても、演目の一つの通称で、「外題」は主役の助六を務める役者によって変わるらしい。

知らなかった。。。

そのため同じ「助六」でも、今回観劇した「助六由縁江戸桜」の、「由縁江戸桜」となっているものは演じられるのは「市川團十郎」と「市川海老蔵」だけ。

調べてみると、他の本外題によって役者が決まっているのがわかり、逆に面白いと思った。 見比べるのもとても面白そうだ。

助六にはモデルが居た?

助六のモデルではないかと考えられている人物は三人いる。江戸浅草の米問屋あるいは魚問屋の大店に大捌助六(おおわけ すけろく)あるいは戸澤助六(とざわ すけろく)という若旦那がいたという説、京・大坂でその男気をもって名を馳せた助六という侠客だとする説、そして江戸・蔵前の札差で、粋で気前のいい文化人として知られた大口屋暁雨(おおぐちや ぎょうう)だとする説である[要出典]

wikipediaより

このうち、大口屋暁雨は実在する人物で、助六の衣装と同じ出で立ちで吉原を闊歩していたそう。

「wiki」にもあるように、浅草の蔵前で札差(ふださし)をしていた人物で、文化的な面も持ち合わせ粋な遊びをしていたらしく、「暁雨」というのも俳名らしい。

札差とは江戸時代に幕府から旗本・御家人に支給される米の仲介の事を指し、浅草の蔵前に店を出し、米の受け取り・運搬・売却による手数料を取るほか、蔵米を担保に高利貸しもして、利益を相当上げていたみたいだ。

二代目団十郎と交友を深めていて、江戸ではその頃から「助六」のモデルは大口屋という噂があったとか。

団十郎が大口屋暁雨を真似たのか、大口屋暁雨が助六を真似たのか。。。

この大口屋暁雨を本当にモデルにした演目があり福地桜痴作の『侠客春雨傘』がそれ。いつか観てみたい。

マイクを付けた方がいいかも。。。声が聞こえない!

以前から思っていたが、とにかくマイクを付けて欲しい。

今回観たの「助六」は夜の部で、他に2つの演目があった。
以下が夜の部の演目。

  • 引窓
  • けいせい浜真砂
  • 助六由縁江戸桜

「引窓」、そして「けいせい浜真砂」は、ある歌舞伎役者さんの声は全くと言っていいほど聞こえず、セリフがわからない!

伝統をそのまま変えずに伝承する事と、ある程度時代に合わせた方がいいものもあると思う。

実は前々からミュージカルのように、マイクを見えないように付けた方がいいのでは?とずーっと思っていた。

両親も違う席で観ていたのだが、終わって感想を聞いたら「セリフが全く聞こえなかった」と残念そうだった。

内容を知っている人なら生の声で問題ない、マイクなんて野暮と思われるかもしれないが、そうだろうか?

私でも全く聞き取れず。。。「全く」ですよ。なので、お歳を召した方は本当に聞こえないと思う。
内心は「聞き取れないな〜」と思われていると思う。

昔と小屋の大きさが違うだろうから、生の声だけだと無理があると思うので是非お願いしたい!

とにかく「声が聞こえる」というのではなく、声が聞こえたとしても、

  • セリフ一つ一つが聞こえたり、聞こえなかったりする。
  • 声が聞こえる俳優と、聞こえない俳優との差がありすぎる。

ただでさえ、抑揚が付き、当時のセリフで今とは違う言葉が使われているため、集中して一語一句を聞き逃すまいと真剣に聞いているからこそ思う。

きちんとセリフ、内容を知りたいからだ。。。

本当の意味でお客に楽しんでもらっているだろうか?

とにかく、「助六」は豪華絢爛で、見応えはあった。

歌舞伎を観劇した事が無い方は一度、足を運んでみるといいと思う。
イヤホンガイドは借りた方がいい。

最後に、もう一つ私がいつか観てみたい演目は「青砥稿花紅彩画」で、通称「白浪五人男」。

画像は全てチラシ、パンフレットから

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